こんにちは。執筆担当Kです。
みなさんも最近Wi-Fi6という言葉を目にすることが増えてきたのではないでしょうか。Wi-Fi6対応ルータに買い替えるとWi-Fiの速度が速くなるというのは本当でしょうか?
実は新規格だからといって速度があがる場合と今までと変わらずの場合があるのはご存知でしょうか?ます。規格を理解している方は問題なく新規格の恩恵を受けることができるのですが、規格を理解していない方は実は恩恵を受けていないかもしれません。今回はその新規格の注意点などについてのハナシを皆さんに紹介していきたいと思います。
最後にはおすすめ機種も紹介していますのでぜひ参考にしてみてくださいね。
Wi-Fi6とは?通信速度は速いの?
Wi-Fi6は規格上では802.11axなどと呼ばれますが、最大理論値は9607Mbps。
(理論値は数字上の話なので理論値の速度は出ません。一般家庭では800Mbps~1700Mbpsとかで動いており、さらに電波状況等により実速度は落ちるものです。)
Wi-Fiに関して理解するためにこれから中身のハナシをしていきましょう。
Wi-Fiには2種類の電波がある
Wi-Fiには2.4GHzと5GHzの2種類の電波があります。
(他にもありますが主要なのはこの2つです。)
近年多くの機器が両方に対応していますが、片方しか対応していない機器もあるので注意が必要です。
電波の種類 | メリット | デメリット |
2.4GHz | 対応機器が多い | 住宅街などでは混雑しやすい |
5GHz | 混雑しにくい | 対応していない機器がある |
使用する機器によって対応している電波は異なる
以下に機器の一例を記載します。
実際に対応しているかは機器名や型番で検索してみましょう。
対応 | 機器の一例 |
2.4GHzと5GHzに対応している | 最近のスマートフォン・PC Nintendo Switchなど |
2.4GHzと5GHzに対応している (5GHzチャネル制限) | Amazon Fire HD タブレット※など |
2.4GHzのみに対応している | 低価格帯・昔に発売された スマートフォン・PC Nintendo 3DSなど |
5GHzのみに対応している | (ほぼ見かけない) |
5GHzチャネル制限と書いてあるのは5GHzの電波の中でも使える電波が限られている機器です。W52といわれるチャネルしか使用できません。チャネルについては後述します。
※ファームウェアアップデートでチャネル制限が解除されました(全機種かどうかは不明)
主に使われている規格の一覧
Wi-Fiの規格は現在様々な企画があります。
無線では主に802.11~という規格が制定されており、それによって仕様が異なります。
規格 | 最大速度(リンク速度) | 電波 |
802.11b | 11Mbps | 2.4GHz |
802.11a | 54Mbps | 5GHz |
802.11g | 54Mbps | 2.4GHz |
802.11n(Wi-Fi4) | 600Mbps | 2.4GHz/5GHz |
802.11ac(Wi-Fi5) | 6933Mbps | 5GHz |
802.11ax(Wi-Fi6) | 9607Mbps | 2.4GHz/5GHz |
上記だけ見ると、802.11ax(Wi-Fi6)って速いんだ!って思うかもしれません。
確かに技術の進歩で速くはなっていますが、802.11n(Wi-Fi4)以降は上記の最大速度(リンク速度)が出ることはほぼありませんし、実際に出る速度は電波状況などによりリンク速度より必ず低くなります。
自分の環境ではどの速度が限界なのか、実際に考えていきましょう。
落とし穴①:どの規格で通信するか確認しよう
基本的に802.11axに対応している機器は802.11acなどの古い規格でも通信できるようになっています。電波の種類(2.4GHzや5GHz)さえ合っていれば通信自体は可能です。
どの規格で通信するかは親機(Wi-Fiルータ)と子機(スマートフォンなど)の両方が対応している規格で通信されます。つまり買い替えなどでWi-Fiルータが802.11ax対応になったとしてもスマートフォンが802.11ac対応であった場合、802.11acの通信になるわけです。
このようにWi-Fiは双方で対応している規格で通信します。
Wi-Fiルータのパッケージにはこの仕組みが書いてなかったり、書いてあったとしても小さな字だったり、初心者に対しての配慮が少ない気がします。
落とし穴②:最大ストリーム数によって最大速度は変わる
Wi-Fiルータの商品ページの仕様欄をよく見ると「3×3」「3ストリーム」などの数字がたいてい書いてあります。簡潔に言うとこれはアンテナ数のことですがWi-Fiではこれをストリームといいます。上記の例だと最大ストリームは3です。
お察しの通り、このストリームも双方のより少ないストリームで通信されます。
例えば、Wi-Fiルータが3ストリーム、スマートフォンが2ストリームであったとします。この場合は2ストリームとなるわけです。
この件も意外と触れられてないですが、スマートフォン・PCは1ストリームや2ストリームが主流で上位機種でない限り3ストリームはないですし、4ストリームなんてまれです。
最高1733Mbps!最速ルータ!などとうたっている製品を買って実際に接続してみたら866Mbpsしか出ない・・・なんて状況は露呈してないだけでかなりあります。
家電量販店の人もなかなか触れないですが、個人的にはかなり重要だと思っています。
自分の環境の最大速度はどのくらい?
上記では2つの落とし穴を紹介しましたが、実際にはどのくらいの最大速度が出せるのでしょうか。
以下のページを見てください。
MCS Index Table, Modulation and Coding Scheme Index 11n, 11a…
これはMCSインデックスといってWi-Fiのリンク速度の一覧で、802.11n(Wi-Fi4)以降のリンク速度を調べるのによく使われます。
速度に関わる大きな項目は上で紹介した2つの落とし穴ですが、ほかにも速度にかかわる項目があります。
以下に主要な項目を記載します。
項目 | 説明 |
Spatial Stream | ストリーム数のことです。 |
Modulation/Coding | 変調/符号です。(後術) |
OFDM (Prior 11ax) | 802.11n・802.11ac(Wi-Fi4・Wi-Fi5)のリンク速度表です。 |
OFDM (802.11ax) | 802.11ax(Wi-Fi6)のリンク速度表です。 |
20MHz・・・ | チャネルボンディングです。(後術) |
0.8µs GI・・・ | ガードインターバルです。(後術) |
変調/符号って?
これは電波状況によって変化します。なので電波が悪ければ通信を継続しようとしてより低い変調/符号の速度になります。この項目は本当に環境に依存するのであまり意識するところではないかもしれません。
また、規格によって最大値がありますので以下に記載します。
規格 | 最大の変調/符号 |
802.11n(Wi-Fi4) | 64-QAM 5/6 まで |
802.11ac(Wi-Fi5) | 256-QAM 5/6まで |
802.11ax(Wi-Fi6) | 1024-QAM 5/6まで |
チャネルボンディングって?
チャネルボンディングの説明をするまえにチャネルの説明をしましょう。
(ちなみにチャンネルっていうほうが日本人のなじみは深いですが、ITだとなぜかチャネルっていうことがかなり多いです。)
Wi-Fiの電波は下記の1つ以上のチャネルを使って通信します。
日本で使用できるチャネルは以下のようになっています。
電波の種類 | 俗称 | 使用できるチャネル |
2.4GHz | – | (基本的には)1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・11 |
5GHz | W52 | 36・40・44・48 |
5GHz | W53 | 52・56・60・64 |
5GHz | W56 | 100・104・108・112・116・120・ 124・128・132・136・140・144 |
使えるチャネルがいっぱいありますね。
これらの複数のチャネルをまとめて速度を上げる技術がチャネルボンディングです。
802.11n(Wi-Fi4)以降で最大速度がうなぎ登り(表現正しいのか?)になっているのはこの技術の影響が大きいです。
チャネルボンディングは20MHz/40MHz/80MHz/160MHzというようになっています。
5GHzの場合、それぞれ使用されるチャネルは1つ/2つ/4つ/8つです。
例にあげると、40MHzのチャネルボンディングの場合、チャネルを2つ使用しますので36chと40chを使ったりします。
2.4GHzは考え方が異なり、40MHzの場合は1chと6ch、6chと11chの2パターンです。
これは5GHzでは隣同士のチャンネル(例えば36chと40ch)が干渉しないのに対して2.4GHzでは余裕で干渉してしまうためです(1chと2chとか)。
チャネルボンディングでは干渉を避けなければならないので間隔を1chと6chのように離さなければならないのです。
チャネルボンディングも規格によって最大が決まっていますので以下で紹介します。
また、802.11acと802.11ax対応のWi-Fiルータでは80MHzまでという製品がザラにありますので160MHzが必要であれば確認してみてください。
規格 | 最大チャネルボンディング |
802.11n(Wi-Fi4) | 40MHz |
802.11ac(Wi-Fi5) | 160MHz |
802.11ax(Wi-Fi6) | 160MHz |
また、チャネルボンディング機能は電波が混雑している状況などで自動的に20MHzなどのチャネル数を減らして通信する場合もあります。(混雑状況によってはそのほうが安定するため。)
環境によっては手動で20MHzなどに小さくすることで安定して結果的に速度が上がる可能性があります。
ガードインターバル(GI)って?
簡単に言うと信号送出の休み間隔のことです。
休み間隔といっても1/1000000秒前後という短い時間ですが、リンク速度に多少影響があります。
個人向けWi-Fiルータでこの項目を設定できるものはおそらく無く、変調/符号と同様に完全自動判断でころころ変わります。
経験上、電波状況が悪くなれば間隔は広がり、安定性を求めるため速度は落ちますが、微々たるものなのでそんなに意識することではありません。
参考例
「802.11ac」で「2ストリーム」、チャネルボンディング「80MHz」の場合の最大速度は
電波状況がよければ「256-QAM, 5/6」「0.4µs GI」になるので最大リンク速度は866.7Mbpsとなります。
速度が速いWi-Fiルータを買っても意味ないの?
ないわけではないです。必要なら買いましょう、ということが言いたいわけです。
ここでは深く触れませんが、ストリームをうまく活用する「MU-MIMO」などといった新技術のおかげで快適性がアップします。複数のスマートフォン等を同時に通信するような人数の多い状況ではメリットがあります。(ただしこのMU-MIMOも親機/子機側が対応している必要があったり複雑です。)
また、高価格帯の方が様々な機能がプラスされていたり、作りが良かったりするので購入後の後悔はグッと低くなりますね。
おすすめのWi-Fi6のルーターを紹介
ルーターを家庭用に選ぶ際、どのメーカーを選んでおけばよいかと言えば、大体はBUFFALO・TP-Linkのどちらかで選んでおけば良いと思います。
どちらもルーターのシェアが非常に高く、操作性の良いスマホアプリと連携することで非常に簡単にネットの設定を完了することが可能です。
一般家庭向けでは、Wi-Fi6の技術的な進歩で家庭で使う分には大体8千円程度も出せば安定したネットワークを得られる時代ですので、このラインを目安にルーターを選んでみてください。
あまり安すぎる商品を選ぶと頻繁にネットが途切れる、セキュリティ的に少々不安が残るなどのデメリットがありますので私がおすすめするラインは8千円以上です。
TP-LINK Archer AX4800/A
TP-LINK Archer AX73/A
TP-LINK Archer AX90/A
バッファロー WSR-1800AX4S/NBK
バッファロー WSR-5400AX6Sシリーズ