Lanケーブルの多様性が広がるにつれて、いつのまにかケーブルの種類が増え、時代についていけなくなりネットワーク環境がアップデートできず、進歩し続けるLANハブやLAN中継機の性能をフルに使うことのできない方が増えています。
LAN環境の構築はもちろんLANハブ(無線ルーターについているものも)の性能も重要ですが、LANケーブルのことも理解してあげなければせっかくの新機種の性能を十分に引き出してあげることができません。
今回はLANケーブルの選び方に関するLANケーブルの種類や速度ついて、無線LANとの比較を解説していきます。
LANケーブルの選び方を考える
最近は無線LAN機器などが増え、PCにも有線LANの口が無いなど、LANケーブルを購入するような機会は減ってきていますが、fpsゲーマーなど安定した通信を求める人々にはまだまだ必要とされています。
コストを抑えたい方から高速通信を求める人まで、幅広いユーザーに対応するよう紹介していきます。
そもそも全部無線LANでよくない?
LANケーブルの選び方の話の腰を折るようですが、fpsゲーマーなどのハードなユーザー、ITオタクを除いて無線LANで通常は十分かと思います。
ただし、有線と無線の関係は安定性と利便性のトレードオフです。
メリット | デメリット | |
無線LAN | ・ケーブルが無くてすっきり | ・安定しない場合がある ・有線と比べて速度が遅い場合が多い |
有線LAN | ・高い安定性 ・無線と比べて速度が速い場合が多い | ・ケーブルが邪魔 |
一般の方はスマホからPCまで無線LANでカバーできるので、LANケーブルを探すようなことはないかと思います。
インターネットの終端装置(モデム、ONUなど)と繋ぐだけで、そもそも同梱されているケーブルで十分です(たまに粗悪なケーブルもありますが)。
カテゴリと速度について
ここからは「LANケーブルの選び方を詳細に考えたい」といった方向けです。
「xxBASE~」といった規格(速度の指標と考えてよいでしょう)と、「カテゴリ」(カテゴリが上がるにつれて転送速度が向上)を覚えていただきたいです。
規格
規格 (一般的なもの) | 片方向の速度 (全二重の場合) | 備考 |
10BASE-T | 10Mbps | 化石。現在一般家庭ではほぼ使用されていないが、 企業のネットワークで稀にこの規格で 通信していることを見ることがある。 |
100BASE-TX | 100Mbps | LANの口がついているPCはほぼこの規格に対応。 廉価なPCのLANの口だとこの規格どまり。 安い無線LANルータを買うと インターネット側の口は1000BASE-T対応なのに PC接続側は100BASE-TXだったりする。 一般的な規格の中で唯一語尾に「X」がつく。 |
1000BASE-T | 1Gbps | 一番普及している規格ではあると思う。 それなりのPCとルータを買っていれば この規格で通信可能。 1000BASE-TXという別物の規格があるが、 普及はほぼ無いに等しい。商品パッケージ等に 1000BASE-TXと書いてある場合も 1000BASE-Tで通信可能なので特段意識しなくてよい。 |
2.5GBASE-T | 2.5Gbps | マルチギガ対応として5GBASE-T向け製品とともに出てきたが 2.5GBASE-Tのみ向けの製品はあまり見かけない。 |
5GBASE-T | 5Gbps | マルチギガの筆頭として10GBASE-Tより コストを抑えることが可能で製品もちらほら見る。 自作用のマザーボードでもこの規格で 通信できる口がついている場合がある。 |
10GBASE-T | 10Gbps | 自作用のマザーボードやLANカード増設で対応可能。 現状一般家庭で容易(?)に実現可能な規格。 |
カテゴリ
カテゴリ | 対応規格 | 備考 |
カテゴリ5 | 1000BASE-Tまで対応 | 家電量販店などでは確実に見ない。 売っていたとしたらそこは骨董品屋である。 規格上は4ペア8本の線があることになっているが、 2ペア4本しかないケーブルもあるので注意。 |
カテゴリ5e | 1000BASE-Tまで対応 | もっとも普及している(と思う)ケーブル。 一般的にはこれで問題ない。 個人的に5eのケーブルを使ってどこまでイケるか 実験したことがあるが、5eでも5GBASE-Tまで通信可能であった。 こちらも稀に2ペア4本しかないケーブルもあるので注意。 5eで2ペアはさすがに笑う。 |
カテゴリ6 | 10GBASE-Tまで。 (ただし30m程度まで。) | 個人的に一番おすすめのケーブル。 それなりに安く、コスパもよい。 パッケージには書いていないが10GBASE-Tで通信可能。 |
カテゴリ6e | 10GBASE-T | メーカー独自の規格。勝手に規格作っちゃったっぽい。 6Aのラインナップが揃うまで販売していた記憶がある。 最近は見かけない。 個人的には6と同等として見ているが果たして・・・。 |
カテゴリ6A | 10GBASE-T | カテゴリ6に次いで2番目のおすすめ。 2.5G/5G/10GBASE-Tを予定しているなら これだと安心かもしれない。 |
カテゴリ7 | 10GBASE-T | カテゴリ7以降はホイルされているので個人的には勧めない。 安ければ。 |
カテゴリ7A | 10GBASE-T | 上記同様。 |
カテゴリ8 | 40GBASE-T (ただし30m程度まで。) | 高すぎる。買う価値あるか不明。 そもそも40GBASE-Tとか普及することが 可能なのだろうか?疑問。 金があるならどうぞといった印象。 |
最近一般的に売られているものとしてカテゴリ5e・6・6e・6A・7・7A・8がありますが基本的にはカテゴリ6か6Aを選んでおくとよいでしょう。
カテゴリ6eというものがありますが、メーカーが勝手に作った規格で、性能としては6と同等以上または6Aより下かと考えています。
10Gネットワークを作るならカテゴリ6A以上とされており、カテゴリ6の商品パッケージには10Gbps対応と書いていない場合が多いですが、30m程度までならカテゴリ6で10Gbpsは十分可能ですし、値段も比較的安いので家庭内を長距離引き回す場合を除いて6で十分かもしれません。
カテゴリ6と6Aの値段がさほど変わらないなら6Aにしましょう。
また、カテゴリ7/7A/8ですが、アルミホイルのような素材でシールドされているSTPやFTPなどと呼ばれる線の作りになっており、特徴としてLANケーブルの先端部分がメッキっぽくなっています。
ノイズから守って通信を安定させる目的などがある一方、シールドされたノイズが他の機器に影響を及ぼしたり、ノイズの逃げ場がなく通信に影響したりする例があります。
アース(接地)設計ができる方はいいかもしれませんが・・・一般人にはケーブル内部の結線状態もわからんし、良い方に転ぶかそうでないかも分からんのにどうすんのよって感じのケーブルなので個人的にはあまりお勧めしません。
無理して買うものではなく、6/6Aよりも断然安い!な状況なら買ってもいいかも、レベルです。
カテゴリ5e/6/6e/6AにもSTP・FTPの製品がまれに存在しますので注意してください。私は普通のUTP(シールドなし)で作ってあるケーブルを購入したほうが無難かと思います。
ケーブルの形状について
単線・より線・スタンダード・スリム・極細・フラットとかどうなの?
まずは単線とより線についてです。
LANケーブルの線は基本的に4ペア8本の線で構成されています。その一本一本の線の中身が太い1本なのか、細かい線が撚(よ)ってあるのかの違いです。
パッケージや商品説明ページに単線・より線の記載がないものは大抵より線な気がします。
種類 | 説明 |
単線 | ノイズには強いがケーブル自体が固く曲げにくい。安定を求める人向け。 |
より線 | 単線よりノイズには弱いが曲げやすい。見た目重視。 |
また、スリム・極細・フラットとうたっている製品があります。中身はより線。
無線じゃ嫌だ、有線で安定した通信をしたい、けどテーブルの上にノートPCを置いていて頻繁に動かしたりする、なんて方に向いているんじゃないかなと思います。
ノイズに弱いといっても一般家庭で使う分には安定していますし、特に問題はないと考えています。
数メートルの短いケーブルならスリム・極細・フラットケーブルでも良いかなと思いますが、2.5G/5G/10GBASE-Tのような高規格を求めるなら単線、スタンダードタイプにすれば精神的にも安心なのではと思います。
そもそも、スリム・極細・フラットとか規格外なのでは?と思ったりもしますが、規格に則していないとじんましんが出るような人はそもそも製線業者に特注するべきであり、一般用途では通信できればそれでいいでしょう。
結論としては曲げる必要がある・自由度を求めるならスリム・極細・フラットを買うべきであり、そうでないなら単線かつスタンダードタイプを買う。です。
(ちなみにカテゴリ6までは単線でも割と簡単に曲がりますが、カテゴリ6A以上の単線はマジで曲がらないです。全然言うこと聞かない。太い針金のようで配線に苦労します。)
おすすめのLANケーブル
数メートルでも単線をを出している、かつ、家電量販店やネットで簡単に手に入るものはサンワサプライくらいなので、私はずっとお世話になっています。
elecomも個人的には隙間ケーブルとか画期的な商品を出しているので好きなのですが、巻売りでない限りほぼより線ですので買うことは少ないです。
B社のツメの折れにくいケーブル(?)みたいのがありますが、経年劣化してLANの口に折れたツメが挟まる経験が職場で何十回もあるので嫌いになりました。多分埃っぽい環境ってのもあるんでしょうけど。
KB-T6TS-03 カテゴリ6 単線 3m ツメ保護あり
最初にもおすすめしましたが、個人的には特別な理由がなければこちらを購入しています。
カラバリ豊富・安定・安い。全てにおいて必要十分です。
KB-T6ATS-03W カテゴリ6A 単線 3m ツメ保護あり
2.5G/5G/10GBASE-Tなどの高規格で通信したい場合にはこちら。
カテゴリ6でも大丈夫なんですけどね。しかも上記の2倍くらい値段が・・・
自己満足のために買ってます。上述のとおり、針金のよう。
ITオタク向けの話ですが、紹介したケーブル、ツメ保護があるのでケーブル整理するときとかにはツメが折れなくてめちゃめちゃいいんですが、CatalystのL3とか最終差し込み位置が奥行のある機器に挿すと抜くときにめっちゃ苦労します。3750だとリンクランプに覆いかぶさる感じ。3850の48ポートとかはMODEスイッチおしっぱで大事故です。
気になる人はニッパーとかで保護カバーをチョッキンするといいです。
あと、KB-T6ATS、個人的には好きなんですが、カバーの横幅がありすぎてCatalyst(他も大体同じ)で隣のポートとカチ合います。なんとかギリギリ差し込めますが。あと0.5ミリ削ってくれたらなぁ。
単純にLANケーブル、何でもいいからほしい!って人向けのおすすめは以下。
KB-T6TS-03 カテゴリ6 単線 3m ツメ保護あり
Amazonで安く売っており、カラーバリエーションも豊富です。安定してる。
LANケーブルを変えると速度は早くなる?
この答えは”No”であり、部分的に”Yes”でもあります。
まず、Noの理由から。
いま最も普及している100BASE-TXまたは1000BASE-Tは家電量販店やネットで売っているLANケーブルでほぼ可能であるからです。
カテゴリを高規格なものに交換したところで、ケーブル両端の機器(例えばルータとPCなど)が対応していないと意味は無いです。
速度が速そうなパッケージに騙されて10GBASE-Tにはしないけどとりあえず対応だから買おう、といった安易な考えに走らないほうがお財布のためです。
ケーブルを交換したら速度が上がった、という声をたまに聴きますが、速度の測定に使ってるのがスピードテストサイトだったりして比較にすらなってないのと、(インターネット越しの速度測定なんて時間によってもサーバによっても変わるものだし、参考程度にもならない場合も。)、そもそもケーブルが粗悪/初期不良/劣化してたりする理由がほとんどだと思います。
次に、Yesの理由。
先ほど書いたようにケーブルを何年も使用していたり、折り曲げが頻繁に起こるような環境では交換することで速度が上がる(というよりも元に戻ってるんですよね)ことがあります。
また、1000BASE-Tを実現するには4ペア8本の線が必要ですが、カテゴリ5や5eでも2ペア4本の線になっている場合があるそうで(私は今まで仕事以外では1回しか見たことがありませんがネット上をみると割とあるみたいです。)、問題がなくても昔のケーブルや安価すぎるケーブル・付属品のケーブルなどは要チェック。2ペア4本の場合は交換すると速度向上につながる場合が大です。
また、2.5G/5G/10GBASE-Tなどの高速なLANが実現できる環境をお持ちの方。これはカテゴリが5eだったりすると、実現できない可能性があります。
ちょっとオタッキーな話も入りましたが、以上がLANケーブルの選び方のおすすめです。参考までに。